ディープインパクトで思い起こされるのは、何といっても強烈な末脚です。最後の直線で小柄な体をダイナミックに躍動させ、他の馬が止まって見えるかのように走る差し脚は見る人の心を強く揺さぶりました。

ディープインパクトの位置取りは?

実際、ディープインパクトの国内のレース13戦のうち、11戦は後方からのレースです。スタートがあまり上手でないことと、圧倒的に切れる脚を持っていたことから、このような位置取りに落ち着いたのでしょう。

後方からの競馬でないレースは新馬戦と菊花賞です。新馬戦は9頭立てで、4-5-3-3という中盤から徐々に上がっていくというオーソドックスな位置取りのレースでしたが、菊花賞は7-7-7-7とずっと中盤のままでした。

菊花賞は他のレースと同じように後方から行く作戦でしたが、1周目のゴール板付近で馬がかかってしまいます。それを武騎手が必死になだめていたことがこの7-7-7-7という数字から感じ取れます。武騎手はこの菊花賞の序盤の展開を「ディープインパクトが1周目の直線を最後の直線だと思ってスパートした。それほど頭の良い馬だった」とコメントしています。

脚質の特徴が最も現れたレースとは

ディープインパクトの末脚がもっともダイナミックに活かされたのがデビューから2戦目の若駒Sでしょう。スタート直後からテイエムヒットベ、ケイアイヘネジー2頭が大逃げをうち、ディープインパクトとの差は一時20馬身ほどとなりました。直線を向いてからも先頭2頭が止まりませんでした。当時の映像を見ると、直線でカメラはその先頭2頭をズームアップしており、ディープインパクトはほとんど写っていません。これは直線を向いてもなお、武豊騎手が全然追っておらず、後方のままだったこともありますが、この時期まではディープインパクトの実力が絶対視されていなかったことを意味していします。

しかし、最後の200mになって、2頭にズームアップしている画面にいきなりディープインパクトが登場します。そして、あっという間にトップに立ちゴール板を駆け抜けます。その一瞬で他の馬を抜き去るスピード感にディープの圧倒的な才能が感じられ、ファンの間で語り草になっているレースです。

また、2006年の有馬記念もディープインパクトの脚質が際立ったレースです。有馬記念が行われる中山は決して得意なコースとは言えず、ディープインパクトの国内の唯一の黒星(2着)が2005年の有馬記念でした。引退レースとなった2006年の有馬記念では、いつものように後方のまま直線に向きましたが、残り200mには坂を楽々と上って先頭に立ち、2着のポップロックと3馬身差の圧勝となりました。

ディープインパクトの鮮烈な末脚はいつまでもファンの心に残るでしょう。