最強7冠馬ディープインパクトの出現は衝撃的なものでした。

「ディープインパクト」は2005年流行語大賞の候補となり、菊花賞では京都競馬場に詰めかけるファンのために京阪本線淀駅で臨時列車を増発するなど、競馬ファンの域を超えて人々に愛されました。

このような社会現象を巻き起こしたディープインパクとは今なお、不動の最強馬とされています。

 

ディープインパクト 最強

ディープインパクト最強論争

最強7冠馬と言われながらもまだなお競馬ファンの間では「ディープインパクトは最強ではない」という論争が起きています。

もちろん、ディープインパクトは誰もが認める強い競争成績を残しています。ですが、「強いけど圧倒的でない」というのが否定派の根拠のひとつになっています。
3冠馬を達成したのは競馬の長い歴史の中でも7頭しかいませんが、その各馬の通算成績を見てみましょう。

  • セントライト(1941年)12戦9勝
  • シンザン(1964年)19戦15勝
  • ミスターシービー(1983年)15戦8勝
  • シンボリルドルフ(1984年)16戦13勝
  • ナリタブライアン(1994年)21戦12勝
  • ディープインパクト(2005年)14戦12勝
  • オルフェーブル(2011年)21戦12勝

例えばディープインパクトはデビュー後7戦7勝で無敗の3冠王になりましたが、シンボリルドルフも8戦8勝で3冠王となっており、甲乙つけがたい数字ではあります。

また、ディープインパクトの通算成績は14戦12勝ですが、シンボリルドルフは16戦13勝とこれも圧倒的な数字ではないといってもいいでしょう。

また、ディープインパクトにおいては海外での凡走も最強論争の材料となっています。2006年には世界の最高峰フランスの凱旋門賞に出走しましたが、3着に終わり、その際に飲んだ風邪薬が薬物と判定され、失格になってしまいました。

それと比較して、タイキシャトルは短距離馬のため、クラッシック戦線には参加できませんでしたが、通算成績13勝11敗であり、1998年にはフランスG1ジャックル・ル・マロワで勝利を収めています。
オルフェーブルは凱旋門賞を2着2回でそのうち1回はあわや勝利かという惜敗でした。タイキシャトルやオルフェーブルと比較するとディープインパクトの凱旋門賞はふるわない走りでした。

それでも最強馬といわれる理由

このように名馬とよばれる馬とディープインパクトは、数字上はそれほどの差はありません。それでもなお、国民的人気となり、最強馬と呼ばれるのはどのような理由があるのでしょうか。

衝撃的な勝ちっぷり

ひとつにはレースにおける圧倒的な勝ちっぷりにあります。スタートは決して上手ではない中で、後方からスタートし、バックストレッチから最終コーナーにかけてスルスルと上がり、直線であっという間に突き放すという鮮やかな勝ち方がファンの心を捉えました。

新馬戦は上がり3ハロン33秒1で4馬戦差の圧勝。その時のメンバーにはのちに重賞を勝利するコンゴーリキシオーもおり、高いレベルの中での勝利でした。

続く若駒賞は先頭2頭が大逃げを打ち、ディープインパクと一時は25馬身ほど差がついていたにもかかわらず、残り200mからいきなり先頭に立ち、5馬身差で勝利するという目を疑うような勝利でした。

皐月賞を2馬身半で完勝した際に鞍上の武豊騎手がコメントした「飛んでいる感じ」という名言がファンに長く語り継がれていますが、実は、JRA競走馬総合研究所の調査によると、四肢が地面を離れている時間は他もどの馬よりも短く、なおかつ、四肢が離れてから着地するまでに進んでいる距離は他のどの馬よりも長いことが分かっています。

いわば飛んでいるというより「瞬間移動」とでもいうべき走りで、それを武豊騎手は飛んでいるという感覚でとらえたのでしょう。

多くの人を競馬好きにさせたスター性

 

もうひとつは、ディープインパクトの持つスター性です。ディープインパクトは長中距離の牡馬の中ではとても小柄でした。馬体重は436kg~452kgで、デビュー戦の馬体重を一度も超えることはありませんでした。

国内で唯一ディープインパクトに勝利したハーツクライの馬体重が472kg~500kgであることからもいかにディープインパクトが小柄であったかがわかります。

この小さな体で他の大型牡馬をなぎ倒し、力強く勝利する姿に多くの人が元気づけられたのではないでしょうか。
非常に賢いことでも有名で、単勝1.0倍に支持された菊花賞で1週目のゴール前でかかってしまったのは、最後の直線だから先頭に立たなければならないと馬が考えたのではないかと武豊騎手は証言しています。

4歳の有馬記念でも当時有馬記念最速の上がり3ハロン33秒8をマークして完勝し、惜しまれつつ現役生活を終えたディープインパクト。今でもその雄姿が人々の心に残っています。