最後の直線で、接戦が繰り広げられることを「壮絶な叩き合い」と言いますが、騎手がダイナミックに鞭をふるう様子は迫力があります。競走馬は鞭で叩くと速く走れるのでしょうか?また、鞭で叩くと「イタタっ!」と馬は思うのでしょうか?

鞭で叩かれると痛い?

500kg近くある馬体に鞭を入れても、人間が感じるような痛さはないという説や、競走中は馬も気合が入っているので鞭を叩いても痛くないという説もあります。
しかし、動物愛護団体からは虐待との非難を受けて、イギリス・フランスなどではスタートしてからゴールまでの鞭の使用回数制限があり、海外遠征で武豊騎手や内田博幸騎手が制裁を受けています。また、日本でも10回までの制限があります。
虐待との批判を受けての制裁と考えると鞭は少なからず馬に負担を与えるものと言えそうです。武騎手は自身のブログで、日本でゴール前に追わないと「油断騎乗」として厳罰があることを挙げ、鞭の使用制限についてはその馬が上位争いをしている場合は緩和するべきとコメントしています。

鞭は何故必要なの?

競走馬は鞭で叩かれると痛いから速く走ると言われていますが、これは誤解で、鞭を使うと走る気を失くしてしまう馬もいるようです。
競走馬に対する鞭は以下のように使われています。

スパートする指令を出すため

ゴール前の直線だけではなく、スタート直後にハナを主張したい場合などにも使われます。

内外にもたれるクセを矯正するため

特に直線でもたれると斜行で他の馬を邪魔することにもなりかねないため、もたれるクセを直させるために使います。

鞭はどうやって使う?

調教やレースを見ていると、騎手が鞭を持って叩く真似だけしていることがあります。これは「見せ鞭」と呼ばれています。これは実施に鞭を使うとやる気を失くしてしまう馬にスパートを指令するために、鞭を視界に入れるための処置なのです。また、「肩ムチ」も同じような用途で、腹や尻に鞭を入れると嫌がる馬には肩に鞭を入れることもあります。ミルコ・デムーロ騎手も以前鞭を落として素手で馬体を叩く「手鞭」をしていましたが、デムーロ騎手はその後も鞭を落としていなくても手鞭をして馬を加速させています。

藤田伸二騎手は自著「騎手の一分」で岡部幸雄元騎手の鞭の使い方は若手騎手によくあるような力任せではなく、腕と鞭が一体となったようなやわらかい叩き方だったとコメントしています。鞭を使うというのはいたずらに馬を傷つけるのではなく、馬の能力を引き出すためのものだということがコメントからもわかります。

鞭の種類も新馬には柔らかいものを、反応が鈍くなっている古馬には固いものをと、使い分けている騎手も多く、馬に配慮した鞭の使い方をしています。壮絶な叩き合いにも騎手の勝利への思いと馬への配慮が込められているのです。