「先生」「テキ」などとも呼ばれる調教師。騎手と比較してメディアへの露出は比較的少ないので、何をやっているのかベールに包まれている部分もありますが、「新馬戦は血統と厩舎で決める」という人も多く、名馬を育てるのは厩舎、そして調教師の腕にかかっているといっても過言ではありません。
名馬を育て、騎手を育てる厩舎や調教師の仕事をご紹介します。

調教師はどうやったらなれる?

優れた競走馬を常に受け入れて育てるためには、知識や技術はもちろん、有力な馬主や、騎手などの競馬関係者との人脈が欠かせません。そのため、競馬関係者が調教師になることが多いのですが、スペシャルウイークアグネスデジタルなどを育てた白井寿昭調教師は大学を卒業後、厩務員から入って調教師になったという異色の経歴を持ちます。
調教師になるためには試験を受けなければならず、合格率は1割以下という狭き門です。ダービー馬ディープブリランテを育てた矢作芳人調教師は、なんと14回目で合格したといいます。
合格してからは、一定期間開業している調教師の元で人脈を築くために技術調教師として修行するのが一般的で、主催者からの馬房の割り当てを待ちます。主催者が馬房を貸与されたら、調教師としてのスタートです。これも時期が来たら貸与されるということで、いつ開業できるのかも全く分からない状態で待つことになります。JRAの場合、馬房は茨城県稲敷郡美浦村と滋賀県栗東市のトレーニングセンターにあり、調教師はどちらかに拠点を構えることになります。

調教師はどうやって開業するの?

開業といっても、主催者は馬房を貸与するだけで、あとは何も用意されていません。ナリタトップロードの主戦を務め、その後調教師になった渡辺薫彦調教師は、開業した時には、ガス、水道を引くところから始めて、備品はお祝いとして贈られたり、他の厩舎から譲り受けたりしてひとつひとつ集めていったとテレビ番組でコメントしています。
さらに、渡辺調教師によれば、調教助手や厩務員は厩舎のメンバーは主催者が決めるため、調教師が自由に集めることはできないといいます。スタッフが集まったら、スタッフへの馬房の割り振り、調教の進め方、競走馬の受入体制などを決めていきます。
そして一番の難関は優れた馬を集めることです。厩舎を開業した時は、解散厩舎の引継ぎで馬を引き受けたり、牧場巡りやセリに参加して1歳馬を見極めて馬主に購入を働きかけたりして馬を集めるのです
渡辺調教師によれば、騎手は完成した馬に乗るが、生まれたばかりの馬は騎手でもわからないので、最初は調教師について爪、歩き方、目つきなど、馬の見方を学ぶのだそうです。

調教師は日々どんな仕事をする?

調教師は日々どのような仕事をするのでしょうか。

競走馬の調教内容

調教師は厩舎の競走馬の調教内容や競走馬が次に走るレースを決めます。調教ひとつにしても、「世界のスミイ」といわれる栗東の角居厩舎や美浦の藤沢厩舎は2頭または3頭の併せ馬で調教するなど、厩舎によって、また、馬の調子に合わせて調教のスタイルが変わります。

出走レースの決定

馬の調子や、馬主の意向、騎手の意見を聞いて出走レースや騎手を決定します。新馬は故障するとそこで人生が終わってしまうので、出走時期やレースの条件を吟味して最適なレースを選ぶよう注力します。

馬主との連携

馬主に厩舎を信頼してもらい、持ち馬を入厩してもらうのが調教師の仕事です。そのため、普段から馬主に積極的に厩舎の育成方法やスタッフのスキルなどをPRして、一頭でも多くの素質馬を入厩させる取り組みを行います。

騎手、スタッフの育成

騎手はデビューして間もないころは厩舎に所属するのが一般的です。騎手は厩舎で仕事をしながら調教をつけて、乗せてもらうチャンスをうかがいます。騎手が勝利を積み重ねるのは騎手の努力と実力がモノを言いますが、初勝利をあげるのは調教師のおかげだといいます。馬主を説得してポーンとスタートしてそのまま勝てる馬に騎手をのせるのも調教師なのです。このようにして騎手は実績と経験を積み重ねるよう尽力します。
また、調教助手や厩務員がスキルを最大限発揮し、日々成長していけるような環境を作るのも調教師の仕事です。

育成牧場との連携

優れた競走馬を管理するには、優れた馬を入厩させる必要があります。そのため調教師は普段から育成牧場をまわって、良い馬を見分けなくてはいけません。

調教師の収入源は?

調教師は自分で競走馬を所有することができません。そのため、調教師は馬主と預託契約を結び、馬主から預託料を受け取ります。調教師の主な収入源は管理馬の預託料と管理馬がレースに出走した時の賞金です。賞金は10%が調教師に分配されます。

こうしてみると調教師は重労働なんだということがわかります。競走馬を活かすも殺すも厩舎と調教師。海外の競走馬育成方法を貪欲に研究し、よりよい馬を集めて一流の競走馬に仕立て上げる、所属の騎手に経験を積ませるなど、調教師の責任は重く、また、確かなやりがいもあることでしょう。