ビワハヤヒデの弟」として早い時期から注目を浴びていたナリタブライアンですが、皐月賞、ダービーと2着に泣いたビワハヤヒデと対照的に圧巻の着差でクラシックレースを制し、3冠馬となりました。ナリタブライアンの伝説となっている皐月賞、菊花賞のレースをご紹介します。

速いペースにもラクラク対応「皐月賞」

2歳(現在表記)でデビューしたナリタブライアンは、ビワハヤヒデの弟と注目されてはいたものの、新馬戦も1回で勝つことができず、函館3歳(G3)6着、デイリー杯3歳S(G2)3着と決してすんなりと勝てたわけではありませんでした。しかし、そこから朝日杯3歳(G1)を含む怒涛の4連勝で皐月賞を迎えます

このころナリタブライアンは気性面で問題を抱えていました。それはレースが近づくとそれを察知して興奮状態に陥ってしまうことでした。その対策として、大久保正陽調教師はレース間隔をできるだけ詰めました。2月の共同通信杯(G3)、3月のスプリングS(G2)というローテーションを選択したのは気性面の対策からだったのです。その対策が功を奏して共同通信杯では先行策から突き放して4馬身差、スプリングSでは後方から最終コーナーで一気にまくって3・1/2馬身差という強い内容でした。この両レースの結果から3冠馬を確実視する声が高まり、皐月賞では1番人気で単勝1.6倍となりました。相手には弥生賞(G2)を勝利したサクラエイコウオー、デビューから3連勝し、弥生賞(G2)で2着となったエアチャリオット、若葉ステークスを勝利したオフサイドトラップなどがいました。

皐月賞でナリタブライアンが引いた枠順は1枠1番。中山競馬場では観衆の前でスタートするため、スタンドに近い1番枠は馬が入れ込みやすくなり不利といわれています。過去皐月賞で起こった1枠1番の馬のアクシデントとしては1999年にワンダーファングが暴れて発走除外、2000年にラガーレグルスが発走の寸前にゲートから立ち上がって騎手を振り落として競争を中止しています。

このように皐月賞では鬼門の1枠1番ですが、ナリタブライアンは問題にしませんでした。
スタートするとサクラエイコウオーが前半1000mを58秒8と早いペースで逃げる中、ナリタブライアンは7番手から早めに前へ進みます。直線では他の馬と全く違う脚色で独走態勢に入ると2着のサクラスーパーオーに3・1/2馬身をつけて圧勝しました。タイムは1分59秒とコースレコードでした。流れの速いハイレベルなレースに他の馬がついていけない中で、ナリタブライアンはしっかりと対応し、力の違いを見せつけたのです。

先行馬をまとめて置き去り「菊花賞」

皐月賞のレースの内容が評価され、単勝1.2倍の1番人気で幕を開けたダービーはメンバー最速の上がり36.2秒を記録し、5馬身差の勝利でした。レース後の夏は避暑として札幌・函館競馬場にレースに出ずに滞在しましたが、かなり体調が悪く、調整が大幅に遅れたため、栗東トレーニングセンターに戻ってもあまり強い調教ができずにいました。

そんななか、菊花賞の前哨戦となった京都新聞杯(G2)に出走します。トレーニング不足から最強馬ナリタブライアンが負けるならこのレースと言われましたが、なんと単勝1.0倍の人気となります。しかし、レース前からの懸念が的中し、直線でスターマンに刺されて2着に終わりました。

続く菊花賞は、小雨が降り、稍重の京都競馬場で開催されました。ナリタブライアンは京都新聞杯から調子が上向いたと判断され、単勝1.7倍の1番人気となりました。約12万人の観衆を前にスタートするとスティールキャストが積極的に飛ばし、ナリタブライアンは中団からやや前の位置の好位で追走します。スティールキャストは大差をつけ、直線を向いた時には2番手から約15馬身差がありました。しかし、そこからナリタブライアンのギアがあがります。先行していたヤシマソブリンエアダブリンに残り200mで並んだのもつかの間、そこからさらにギアがあがり、あっというまに2頭を突き放して、なんと7馬身差の勝利をおさめたのです。

タイムは3分4秒6で稍重だったにもかかわらず、兄ビワハヤヒデが達成したレースレコードをさらに更新しました。武豊騎手は菊花賞のレースについて「ナリタブライアンが2000mを走った後にさらに別の馬と1000mを走って大差をつけて勝ったようなもの」と評し、ナリタブライアンが他の馬と次元の違うエンジンを持っていることを表現しました。

当時、ナリタブライアンの3冠達成は、同世代が弱いからと揶揄されることも多かったのですが、杉本清アナウンサーは、皐月賞で3馬身差、ダービーで5馬身差、菊花賞で7馬身差と着差が開いていったのがナリタブライアンの強さだとコメントしています。例えば同じ3冠馬であるディープインパクトは皐月賞が2・1/2馬身差、ダービーが5馬身差、菊花賞が2馬身差となっており、クラシックレースでどんどん着差が広げて勝利していくのは他の馬に例がありません。そんなところにもナリタブライアンの底知れぬ強さが光ります。