芝・ダート両方で活躍した数少ない名馬、クロフネ。特にダートでは圧倒的な輝きを見せました。
2012年日本中央競馬会の広報誌「優駿」での読者アンケートではダート部門で2位ホクトベガに3倍以上の差をつける堂々の1位となりました。
また、生産者、騎手、調教師にもアンケートをとったところ、回答者17人のうち9人がクロフネをダート最強馬と推薦しています。
はたしてクロフネはダートで最強なのでしょうか。
クロフネのダート成績は?
クロフネはクラシックに外国産馬が出走可能となったまさにその年に登場しました。
NHKマイルCで単勝1.2倍の人気に応えて見事勝利しましたが、ダービーでジャングルポケットの5着に敗れてしまいます。
秋の神戸新聞杯では、スタートで躓いて先手を取ることができず、スローペースで鞍上の蛯名正義騎手との折り合いを欠き3着に敗れました。
その後天皇賞へ出走する予定でしたが、外国馬枠に対して獲得賞金額が上のメイショウドトウとアグネスデジタルに席を奪われてしまいます。
天皇賞秋に出走できなくなったクロフネはもともと来年のダート・フェブラリーステークスの出走が視野に入っていたことから、天皇賞秋のレースの前日に開催される武蔵野ステークスに出走を決めました。
武蔵野Sでは2.3倍の1番人気。スタートの後方の位置取りから早い時間に押し上げて第4コーナーで先頭に立ち、前年のNHKマイルC優勝馬の2着イーグルカフェに9馬身をつけて圧勝しました。
その時のタイム1分33秒3。JRAレコードタイムで芝のコースのタイムに匹敵するものでした。
鞍上の武豊騎手は早い時間に押し上げたことを「他の馬であんな競馬をしたら惨敗するのは当たり前だが、この馬は最後に突き放して勝ってくれた」と絶賛しました。
その後同じ年の11月にはジャパンカップダートへ出走します。
このレースにはアメリカからリドパレスが出走しましたが、この馬を押しのけて1番人気に推されます。
武蔵野Sと同じように向こう正面から徐々に進出し、またもや直線では独走状態。昨年優勝馬2着のウイングアローに7馬身差を着けて劇的優勝となりました。
翌年には世界最高峰ドバイワールドCを目指したものの、右前足の屈腱炎で登録抹消となりました。
ダート最強の理由とは?
つまり、ダート最強馬とされるクロフネはダートを2回しか走っていないのですが、それでも最強と言われる理由はどこにあるのでしょうか。
圧倒的な着差
クロフネと並ぶ近年のダートの名馬といえば「砂のディープインパクト」と呼ばれたカネヒキリがあげられます。
カネヒキリは大井競馬のジャパンダートダービー、盛岡競馬場のダービーグランプリと3歳2冠を制し、その年にジャパンカップダートを勝利。
屈腱炎から復活した2008年にもジャパンカップダートを勝利し、中央・地方競馬で活躍しました。
3歳で引退を余儀なくされたクロフネはカネヒキリと実績を比較した場合どうしても劣りますが、圧倒的な着差はカネヒキリをもしのぎます。
カネヒキリが3歳で出場した武蔵野Sはサンライズバッカスに敗れ、ジャパンカップダートはシーキングダイヤにハナ差での辛勝でした。
3歳の中央競馬で芝・ダートG1の両方を制覇した
クロフネの偉大なところは芝でも活躍したということです。
デビューしてから2戦目以降の芝ではダービーを迎えるまで1倍台のオッズという絶大な人気を誇り、NHKマイルCで芝のG1を勝利しています。
中央競馬の芝・ダートともG1を3歳で勝利したのはクロフネをおいてほかにはいません。
新馬のうちから圧倒的な力を持ち、その才能が完成されることなく去った。それがクロフネなのです。
クロフネの1年先輩でライバルだったイーグルカフェもNHKマイルCを勝利したあと、1年以上未勝利で苦しみました。
クロフネは陣営の努力で適性のあるダートを早い段階で選択できたのも大きかったでしょう。
それでこそ、短い競争生活のなかで強い輝きを放つことができたのです。
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