牡馬が引退して種牡馬になると、その馬の現役時代の成績と血統で種付け料が決定され、その後産駒の実績に応じて種付け料が上下します。
種付け料がある程度高い方が優秀な繁殖牝馬が集まりやすいとも言われています。
はたして種付け料や繁殖牝馬の強さによって産駒の実力は左右されるのでしょうか。
まずディープインパクトの父で偉大なる種牡馬であるサンデーサイレンスの種付け料についてみてみましょう。
日本競馬に革命をもたらしたサンデーサイレンスの種付け料とは
サンデーサイレンスはアメリカで生まれ、アメリカG1を5勝した馬です。
しかし、父ヘイロー産駒の種牡馬成績は芳しくなく、母系の血統も評価が低かったため、生産者からの種付けの申込みは2人しかいませんでした。
そこへ社台ファームの吉田善哉氏が、種牡馬としての可能性を見込んで16億5000万円で日本に導入することを決意したのです。
当時アメリカでは成功しそうにない血統の馬を高額で購入したということで嘲笑されたのだそうです。
こうして日本にやってきたサンデーサイレンスは約25億円のシンジケートが組まれたものの、種付け料が1,100万円と高額のため、交配の申込みは少なく、初年のほとんどは社台ファームの繁殖牝馬と交配しました。
ところがフタを開けてみると、初年度の産駒はなんと30勝。そのうちG1を勝利した馬は、
- ジェニュイン:1995年皐月賞、1996年マイルCS
- ダンスパートナー:1995年優駿牝馬、1996年マイルCS
- マーベラスサンデー:1997年宝塚記念
- フジキセキ:1994年朝日杯3歳S
- タヤスツヨシ:1995年皐月賞
と、そうそうたる馬ばかり。
種付け料は3年後800万円まで下がりましたが、その年に初年度の産駒が活躍したため、以降2,500万円まで高騰しました。
種付け料は産駒の強さと因果関係があるか?
2016年の3歳牡馬は怪物揃いと言われています。
この馬たちの2歳時の成績とその当時(2012年)の種付け料を代表的な種牡馬で比較してみましょう。
2012年の種付け料トップ3の種付け料と2015年2歳の勝利数は通りです。
- ディープインパクト
種付け料:1,000万円
2歳勝利頭数(生産頭数):35頭(159頭)
- キングカメハメハ
種付け料:600万円
2歳勝利頭数(生産頭数):24頭(184頭)
- ステイゴールド
種付け料:600万円
2歳勝利頭数(生産頭数):20頭(134頭)
こうしてみると、2歳の勝馬頭数は種付け料に比例していることがわかります。
2歳のうちに未勝利を脱することは、クラッシック戦線で戦うための必須条件と言えます。
種付け料が勝利頭数に比例するということを馬券を買う上でも考慮に入れておくべきでしょう。
繁殖牝馬は産駒の強さに影響するか
馬の能力は父、母、そして母の父が強く影響すると言われています。
牝馬の場合は血統がよければ未勝利でも繁殖牝馬になれるため、例えば、G1馬3頭を送り出した希代の繁殖牝馬ダンシングキイは競走馬として1回も出走しませんでした。
こちらも繁殖牝馬トップ3の2012年産駒までの成績をみてみましょう。
- ダンシングキイ
勝利頭数/生産頭数:7頭/11頭
G1馬:ダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムード
- プリンセスオリビア
勝利頭数(日本の産駒のみ)/生産頭数:3頭/3頭
G1馬:トーセンラー、スピルバーグ
- ビワハイジ
勝利頭数/生産頭数:8頭/10頭
G1馬:ブエナビスタ、ジョワドヴィーヴル
このように優秀な繁殖牝馬は未勝利で終わる産駒が極めて少ないのがわかります。つまり、成績のよい繁殖牝馬にはより強い種牡馬が交配され、より勝つ確率も高まると言えるでしょう。
ディープインパクトの母であるウインドインハーヘアは勝利頭数が15頭中8頭で、重賞勝利馬もディープとブラックタイドのみとディープの母にしてはそれほどよい成績ではありません。
これは2002年にサンデーサイレンスが死亡したことが大きな要因でしょう。改めて血統の奥深さが感じられます。
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