「開幕週で前が止まらない」「天候不良で前だけで決まった」などとよく言いますが、
コースの連続した使用や天候などによって馬場状態が変化し、どうしてもトラックバイアス(馬場状態の差異による有利不利)が発生してしまいます。
馬場状態はどのくらいレースの勝敗に影響するのでしょうか。
コースの連続使用による馬場状態の変化
コースを連続して利用していると競走馬がよく走る場所を中心に芝が荒れてきます。
騎手は芝の状態をよいところを選んでコース取りを選択します。芝の状態はレースの勝敗を大きく左右すると考えてよいでしょう。
開幕週の芝コースのレース展開の変化
競馬場で開催した最初の週は芝がきれいに生育されてよい状態になっています。
その場合は先行馬がバテることがないため、「よーいドン」をもくろむ、切れ味勝負の追い込み馬・差し馬は直線の追い込みだけでは届かない、いわゆる「前が止まらない」レースが多くなります。
また、コースの内側も荒れていないため、先行馬が最内枠の経済コースを通ったとしても馬への負担が軽くなります。
つまり、切れる脚を持っていなくても長い距離を平均的に走れる馬が有利となるのです。
また、コースの内側の経済コースの位置取りがしやすい内枠の馬が有利となります。
2005年の京都競馬場の菊花賞が良い例です。
レースは中団からディープインパクトが差し切りましたが、アドマイヤジャパンは2番手から抜け出し、あわや勝利かという激走をみせました。
アドマイヤジャパンはディープパクトの力の差以上のレースをしました。
コース連続使用した場合のレース展開の変化
一方で、コースは毎週レースを重ねて実施していくと、だんだん芝が踏み荒らされてきます。
最短距離を走るためにはなるべく内側を走る必要があるため、内側から芝があれてきます。
そうなると、内側を走るには力がいるようになり、外側を走る必要があります。外枠の馬が外側の進路を確保しやすいので有利となるのです。
新潟競馬場名物の直線芝1000mレースでは外側を回るロスがないため、周回コース以上に外枠が有利となるでしょう。
中山競馬場の最終週に行われる有馬記念が荒れるのもそのためといわれています。
2008年の有馬記念では、14頭中14番人気のアドマイヤモナークがダイワスカーレットの2着に食い込みました。
当日、有馬記念を迎えたコースの芝は内側がボコボコで土がむき出しになっていました。
アドマイヤモナークは大外枠を利用して後方から終始馬場のよいところを周り、あわやダイワスカーレットに迫ろうかという追い込みが決まりました。
なお、競馬場には内埒(ウチラチ)と呼ばれるコースを区切る柵を外側に移動することで、内側の傷んだ芝をコース外にするという作業を定期的に行っています。
東京競馬場では中山競馬場では3mの間隔でA~Cコース、東京競馬場ではA~Dコースがあり、3mずつ外側へずらすことで極端に外枠が有利になることを回避しています。
天候不良による馬場状態の変化
コースの使用状況により馬場が変化する一方で、天候によっても馬場状態が変化します。
競馬場では朝の含水率を計測して馬場状態を良、稍重、重、不良と判定しています。
含水量が一番低いのが良、一番高いのが不良となりますが、含水率が高ければ高いほど力がいる馬場になります。
特に日本の芝コースはスピード重視の馬場となっているため、実力がある馬でも力のいる馬場が不得意な馬も多いのです。
また、馬場が滑るので大きなストライドの馬や、お皿型の大きな爪の馬は不得意といわれています。
また、不良馬場になると、瞬発力が使えなくなるので、先行馬がそのままゴールしてしまうケースもあります。
2003年のジャパンカップダートでは、タップダンスシチーが大雨の中で大逃げをうち、直線勝負を狙った世界の強豪を押しのけて2着のザッツザプレンティに9馬身の差をつけて勝利しました。
重馬場に弱い種牡馬は?
産駒が重馬場に弱い種牡馬がいるか、2015年リーディングサイアーベスト5の馬について2015年時点でのデータでみてみましょう。
馬名:(良)勝率・複勝率 :(稍重)勝率・複勝率:(重)勝率・複勝率:(不良)勝率・複勝率
ディープインパクト(芝) :10%・29%:11%・28%:6%・26%:10%・26%
ディープインパクト(ダート):8%・24%:8%・28%:10%・29%:12%・23%
キングカメハメハ(芝) :11%・28%:9%・27%:9%・27%:11%・26%
キングカメハメハ(ダート) :11%・29%:10%・30%:12%・28%:9%:29%
ハーツクライ(芝) :10%・29%:11%・28%:6%・26%:10%・26%
ハーツクライ(ダート) :8%・24%:8%・28%:10%・29%:12%・23%
ダイワメジャー(芝) :9%・27%:9%・28%:11%・33%:13%・33%
ダイワメジャー(ダート) :9%・25%:9%・26%:9%・25%:7%・20%
ステイゴールド(芝) :8%・22%:6%・20%:11%・25%:10%・32%
ステイゴールド(ダート) :6%・16%:5%・16%:4%・15%:7%・16%
こうしてみるとさすがリーディンサイア―上位だけあって、馬場が多少悪くても各馬そこそこ走りますが、重馬場に強い種牡馬を上げるならば良馬場よりもよい成績を残しているダイワメジャー産駒でしょう。
こうした開催地の芝の状態や天候による馬場状態を考慮しながら予想を考えるのも楽しいものです。ぜひトライしてみてください。
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